オカマが語る死生観
BSディム。西に住むオカマ。祖父の戒名が限りなく「釈由美子」に近い。
童話。東に住むノンケ。目が限りなく「綾瀬はるか」に近い。
希望の死に方
ディムさん体調悪そうですね。死ぬんじゃないですか?
オカマは死なないわよ。オカマである限りね。たとえこの身が滅んでも……!!
あれ?そういう話じゃなくて?
そういう話じゃないですね、明らかに。いや、体弱ると死について思い及んだりするじゃないですか。俺は下痢になっただけでまず携帯電話とパソコンぶっ壊すことを考えましたよ。
なんで肛門と電子機器への破壊衝動が繋がってんのよ!!
いや、死ぬ前に俺と「童話」の繋がり断たないと……。
私はいつ死んでもいいように携帯のセキュリティは万全にしてるし、PCも私が死んだらフォーマットされるようになっているわ。オカマに死角なし!!
凄い…完璧だ…まぁ俺がバラしますけど。
死に方の希望とかありますか? 体育会系イケメンノンケの腹上死以外で。
チッ、お決まりのパターンを潰しにかかってきたわね。
そうねぇ、オカマはどうしても孤独死を意識しちゃうからね。理想としては、最愛の人に手を握られて、「ありがとう」って微笑みながら安らかに昇天したいわ。腹の上で。
なるほど、やはり孤独死が気になるところなんですね。まぁ仮に最愛の人がいなくてもちゃんと友人に囲まれて逝きそうなタイプですよ。あなたは。
腹の上はスルーしたわねアンタ。
1,000人以上の末期患者を看取った医師が書いた「死ぬときに後悔すること25」って本に、「愛する人に『ありがとう』と伝えなかったこと」って項目があるのよ。孤独死待ったなしのオカマには響くのよね。
童話くんは何か希望の死に方があるの?
愛する人がいなけりゃ後悔もクソもないですよ、大丈夫大丈夫。
僕は希望とかないです。何でもいいですね。
すぐそうやってアンタは何でもいいとかどうでもいいとか!死生観について話してるんだから少しは考えなさいよこの厨二病!!
死に方はないんですよ。だってリアリティないから。ただ、墓についてはありますね。必ず近場にしてほしい。
近場の墓?なんでよ?墓とコンビニを間違えて覚えてるんじゃないのアンタ。
遠くまで墓参りさせるのが忍びないんですよ。子供ならともかく、孫らにはどうせ文句言われるし。
別に遠くたって孫は文句言わないわよ!!そんな孫は距離関係なく墓参りなんて行かないわよ。
そもそも、ご先祖様に「墓が遠い」とか言って疎ましがるのはアンタくらいのものよ。
いやちょっと、人聞き悪いですよ。確かに会ったこともない親戚の墓参りに車で二時間かけて行ったときは腰の痛みをボヤきましたが、さすがに大人になりました。ただね、年端もいかないガキなら必ず文句言いますよ。
ガキはいずれ大人になるわよ!!
それよりも、アンタは死についてはほとんど考えてないってことよね。そこが分からないわ。ノンケってみんなそうなの?
たぶん僕と同年代のノンケは似たような思考回路だと思いますけど……。
逆にオカマが死について考えすぎなんですよね。だから今回は僕がオカマから死生観を真面目に学ぶ、という回なんです。今決めました。
オカマの死生観
オカマの死生観、か。そうねぇ、オカマだったら誰もが一度は自分の死について考えるわ。結婚して子供が生まれて、家族のために生きるという、分かりやすい錦の御旗を掲げられない人生を送るしかないからね。
「生きた証を残したい」という願いも、才能もない、金もない、友達も恋人もいないオカマが、この世に何かを残すことに果たして意味があるのか。振りかかる日々の小さな不幸を、物陰に隠れてやり過ごすだけの………やっだーーー!!いつものクセで重くなっちゃうーーー!!!
オカマの死生観、キツいですね。
でも家族や子孫以外にも遺す意義があるものはたくさん存在するじゃないですか。その中でも「仕事」はオカマに残された希望なのでは?
それが本当にやりたい仕事であれば、生きる意味になり得るのかもしれないわね。友人に社会的地位がかなり高いアラフォーオカマがいるんだけど、会っても「仕事がつらい」「部下に裏切られてつらい」「親の介護がつらい」の3パターンしか喋らないわよ。イクラちゃんのほうがまだ会話のパターンが多いわよ。
オカマに限らず、今の社会人で「仕事こそ生きる意味」みたいな人の方が少ないのかもしれませんね。
あ、だからディムさんも「趣味が欲しい」ってしきりに言ってるのか。納得。趣味は人生に彩りを与えますし、何かを遺す可能性すらある。所帯持ちと違って嫁や子供から趣味について口を出されることもない。オカマは趣味に生きるのが王道なのでは?
そう!そぉーなのよ!!アンタ、釜心をよくわかってるじゃないのよ。
何か夢中になれることが一つでもあれば、自分の世界は誰からも干渉されないものなのよ。そこに死が訪れようとね。仕事が趣味で、趣味が仕事って状況が一番いいんだろうけど……ただね、私ももうアラサーだし、どうにも夢中になれることが見つけられないのよね。冷めきったオカマよ。
体育会系イケメンノンケにはあんなに熱くなれるのに、オカマは変な生き物ですね……。
でもディムさんは、今の仕事は別として、仕事そのものは好きですよね? おそらく出会いひとつで「仕事が趣味、趣味が仕事」のウルトラCな人生を手に入れる気がします。
体育会系イケメンノンケの欲望を満たすことでお金がもらえるならそうしたいわよ!でもね、需要がない!需要がないのよ!!
最近、「やりたいことが分からなければ、子どものころに夢中になったことをやってみましょう!」って記事を見つけたんだけど、子供のころの夢中になってたのって「河原でいい感じの石を見つけること」だったのよ。……尿路結石?尿路結石を探せばいいの?何なのよその人生!!
「何なのよ」はあなたのその狭すぎる視野ですよ……。
ディムさんならいくらでも充実できますって。例えば起業するとか。
起業? 業を起こすの?
そうですよ、業を起こすんです。株式会社ディム。
そうね、それもいいわね。さっき実家の母親から「アンタの口座の暗証番号、縁起がいい数字に変えといたから!よろしく!!」って電話があったんだけど、業が起こりつつある感じがすごいするわ。
カルマの方じゃん!
仕方ないわよ、カマだもの。
・編集後記(BSディム)
おはよう。オカマです。今回は死生観についてゆるゆるとお話したわ。
飲み歩いてはくだを巻く空虚な日々が続いているけど、先日、酔っ払って階段を転げ落ちたときに死を、まわりのオカマに助けられたときに生を感じたわ。生きてることって、孤独なときには実感できないのかもしれないわね。
さて、次回からは少し趣が変わるかも知れないわ。なかなか面白いものが提供できると思います。お楽しみに。
・本日の教訓
メメント・モリ